破魔弓の違いと選び方
男児が迎える初めてのお正月。いざ破魔弓を購入する際、まずはその種類の多さに驚かれることでしょう。
見た目の大きさ以外、どこに違いがあり価格差がうまれるのか、それぞれチェックする場所を知り、後悔のない破魔弓選びをお楽しみくださいませ。
材質の違い
破魔弓で重要な部分といえば、もちろん"弓"と"矢"。それぞれの部位の細かな仕様で価格差が生まれます。ここでは4ヵ所を例にあげます。
1.本体の材質
弓矢本体の材質が"木製"か"樹脂(プラスチック)製"かによって価格は大きく異なります。工芸品全般の価値基準としては木製のほうが高価になることが多いです。その見分け方ですが、弓を脇から見たときに"筋(=バリ)"が見えるのが樹脂製です。
2.装飾の材質
弓の上部、下部、持ち手の部分には装飾として巻がありますが、この材質が"籐(とう)"か"綿"か"ビニール"かにより価格が異なります。こちらも工芸品価値基準として天然素材の籐が高価になることが多いです。
見た目の違いは明らかで、ビニールには特有の"テカリ"があり、籐は天然素材特有の色味があります。商品紹介で"籐巻"と表記がある場合は、この箇所の説明をしています。
3.鏃(やじり)の材質
弓の先端となる鏃(やじり)の材質には"金属"や"樹脂"の他、木地に手作業で本金箔押を施した高級品もあります。
またその形状にも違いがあり、種類としては"征矢(そや)"と"鏑矢(かぶらや)"があります。
征矢とは戦場で用いる一般的な矢で、相手を射抜きダメージを与える形状です。破魔弓の考え方では、これで"魔"や"厄"を射抜くというわけです。
一方で鏑矢とは、飛びながら音を出すため"合戦の始まりの合図"であったり"進むべき道(方向)を指し示すための道具"として使われてきました。古事記の中で、スサノオノミコトが平原に矢を放ち、オオクニヌシノミコトにそれを取ってくるよう命じたシーンがありますが、その際に使われたのがこの鏑矢です。
"魔物はこの音を恐れる"という説があると同時に、"道(未知)を指し示す霊的な力の宿る道具"とも考えられてきた歴史もありますので、厄除けとして飾る破魔弓には、いずれも理にかなった矢と考えられます。選ぶ際にどちらにするかはお好みでよろしいかと思います。
4.矢羽根の材質
矢羽根の種類によっても価格は異なります。一般的に"雉(きじ)"や"ガチョウなどの水鳥系"の羽根が多く使われますが、高級品には観賞鳥である"金鶏"や"銀鶏"、猛禽類の"タカ"や"フクロウ"といった珍しい羽根も使われます。
画面左から鷹、フクロウ、金鶏、銀鶏、雉、ガチョウ
とりわけ天然のタカの羽根は高価ですが、これはワシントン条約の規制により現在は全くといっていいほど手に入らなくなってしまったからです。現在流通しているタカ羽根の破魔弓は、規制前に仕入れた羽根を大切に保管している工房さんたちが、毎年、極少数のみ商品化しているものとなります。
化学繊維で作られる"人工羽根"も存在しますが、工芸品ならではの天然素材にこだわり、鯉徳では人工羽根の破魔弓は一切販売しておりません。
ケースの違い
ケースの材質によっても価格は変わります。木製が一般的で、その原材料にはアガチスなどが使われているようです。原材料が"黒檀(こくたん)""檜(ひのき)"などの銘木となると価格は上昇します。一方で低価格品には"樹脂"が使われています。
"黒檀塗"や"花梨塗"といった表記もよく見られますが、これは木の材質が黒檀や花梨ではなく、一般的な木製ケースに塗装をする際、黒檀や花梨の風合いを模写した"塗装技術"のことをさします。
付属品の量や配列の違い
弓や矢の本数、その他付属品の量により価格は変わります。その違いにより本体の配列も変わるので、おのずと見た目の印象もかわります。
小型の破魔弓の中に、たくさんの付属品が付いていると、それが高価でもかなり窮屈な印象を受けることでしょう。逆に大型の破魔弓に弓矢の本数が少なかったりすると、安くなるとはいえケース内の空間が広すぎてしまい、何か物足りない印象を受けるのではないでしょうか。
付属品の多い少ないだけでなく、肝心の弓矢の美しさが損なわれてしまわないよう、バランスのとれた配置の破魔弓をお選び下さいませ。