コレクション:
手のひらサイズの衣裳着雛人形の先駆者。伝統工芸士 山田華悦
昭和46年千葉生まれ。本名"山田吉徳"。18歳の頃より人形師である母"初代山田華悦"のもと人形製作を始め、平成11年より本格的に独自の雛人形制作を開始。環境にも恵まれ順風満帆に人形師の道をスタートしたかのように思われますが、幼少の頃は人形作りの手伝いが嫌いだったそう。
大学生時代にアルバイト感覚で人形作りを始めたところ、想像したよりも効率的かつ美しい人形を完成させたという成功体験からものづくりに興味をもち、卒業後に大手人形製造兼卸会社に入社。そこでこれまで見たことのない数々の雛人形に出会い感性を触発され、自身での人形制作を本格的に決意したのだそうです。
平成24年、日本人形協会認定の節句人形工芸士に任命。翌25年には千葉県指定伝統工芸品に指定され、現在"華悦""尚好"名義の雛人形を制作。破竹の勢いをみせる人形師です。
山田さんたちの制作する雛人形は"衣裳着人形(いしょうぎにんぎょう)"とよばれ、主に胴衣装の着せ付けや手の振り付けを専門に行う"着付け師"として活躍中です。振り付け作業は人形全体の印象を決める作業でやり直しもきかないため、高い集中力が求められる重要な工程です。
現在は奥さまの尚好さんが衣装を仕立て、それを丁寧に吉徳さんが着せ付けるという夫婦二人三脚で制作を行っています。
業界最小サイズへの挑戦
都市部を中心にニーズの高まるコンパクトサイズのおひなさま。小型のお人形は"木目込人形"が最良の選択でしたが、『小さくても衣裳着のような豪華さがほしい』という要望は年々高まる傾向に…。
衣裳着ひな人形はその製作工程上、"柳(横幅18㎝前後)"サイズ以下は美しく作ることが不可能とされてきましたが、設計図を描いては人形制作、描いては制作を繰り返し、長年誰もが手がけられなかった"美しい極小サイズ"豆(横幅14㎝前後)"を数年かけて完成させました。
衣裳着人形にしてこの細やかさを可能にしたのは山田さんの技術力と忍耐力、そして職人としてのプライドに他なりません。
節句人形業界の"今"と"これから"を発信
2016年に発足した節句人形職人ユニット""縫nui"。山田さんご夫婦はこのプロジェクトでも雛人形の"着付け師"として活躍中。今後の活躍にますます注目が集まりそうです。