五月人形 兜 / 加藤鞆美 / 江戸甲冑 源頼朝(白沢瀉威) 三分の一 五段𩊱
甲冑師 加藤鞆美作
江戸甲冑 源頼朝(白沢瀉威)の兜 三分の一 五段𩊱
節句人形(観賞用)としての鎧兜でありながらも、素材や制作技法を限りなく本物に近づけて制作される江戸甲冑。華美な装飾を用いることはせず、落ち着きのある渋好みな仕上がりが特徴です。
金物細工、革細工、染色、漆工など…伝統工芸の高度な技術・技法を結集した総合芸術品としての価値も認められ、国の指定する伝統工芸品に 江戸節句人形/江戸甲冑 として登録されています。
島根県出雲市にある日御碕神社(ひのみさきじんじゃ)が所有する国宝 白糸威鎧。この大鎧をモデルに、名匠 加藤鞆美が江戸甲冑の技法を駆使し兜を制作しました。
実物を手本にしています
本品は現存する国宝の甲冑をもとに制作しています。
国宝 白糸威鎧
-島根県・日御碕神社所蔵-
島根県出雲市大社町に鎮座する"日御碕神社"。同社所有の"白糸威鎧"は、鎌倉時代に源頼朝が神馬一頭とともに奉納したと伝わっている。兜正面の鍬形台には花輪違文が据えられ、胴正面の絵革部分には、利剣と羂索(けんさく)を持った不動明王が火炎の中に立つ姿がみられる。神の色と讃えられた白糸を基調とし、威圧感のない上品な装いが特徴的で、昭和28年に国宝に指定。現在は東京国立博物館に保管されている。
兜の特徴
▲ 唐櫃は兜の台座、収納箱として使用します。
金色に輝く魅力的な「鍬形(くわがた)」は、丁寧に下地を磨き上げた真鍮製の純金メッキ仕上げ。
兜両脇の吹返(ふきかえし)とよばれる部分には、獅子と牡丹が描かれた鹿革を使用。獅子は"百獣の王"、牡丹は"百花の王"とされ、共に描かれることで「さらなる飛躍」もしくは「安住の地」を意味するたとえとして、古来より吉祥の構図として描かれてきました。
頭を包み込む鉢(はち)の部分。成形品ではなく、複数の金属板をそれぞれ鋲でとめて成形する"矧(はぎ)合わせ鉢"とよばれる実物同様の制作技法を用いて仕上げています。
▲ 矧合わせ鉢のパーツ。溶かした金属や樹脂を型に流し込んで成形する鋳物とは異なり、無数の異なるパーツを組み合わせ、実物同様の手法で作られる矧合わせ鉢。鋳物より軽量だが耐久性があり、見た目の美しさも別格です。
兜背面。末広がりの色目は"沢瀉威(おもだかおどし)"とよばれ、源平時代の武士に好まれたデザインです。沢瀉(おもだか)とは水辺に自生する植物で、その葉の形が"矢尻"に似ていることから、別名"勝ち草""勝軍草"とも呼ばれました。
当時の武士はこの葉の図案を兜に落としこみ、多色の威糸(おどしいと)で表現することで、縁起を担ぐとともに自身の美的センスを競い合っていたともいわれています。
そしてこの背面の製作工程こそが、江戸甲冑最大の特徴にして"江戸甲冑たる所以"にもなっています。
江戸甲冑の真髄 𩊱づくり
江戸甲冑が一般的な鎧兜と大きく異なるのは、主に兜背面を構成する"𩊱(しころ)"の部分(上記画像の赤色の部分)。通常の𩊱には、機械等で成形された金物の"小札板(こざねいた)"が使われますが、江戸甲冑では本物の制作技法にならい、和紙や革を用いた小札板を使います。そしてその製作工程は、職人の並々ならぬ技術と忍耐力により支えられています。
製作工程
▲ 1.小札づくり
𩊱の基礎となる小札板を作る前にまずは小札作りから。何枚も重ねて厚くした和紙(革)を短冊形に裁断したあと、威糸を通すための穴をあけて小札を完成させます。※後の糊付けの際に穴が塞がれてしまうので、2の工程の後に穴をあける職人もいます。
▲ 2.手並べ小札
前出の小札を一枚ずつ手作業で並べていきます。作品の大きさや種類により、並べる小札の枚数や形状(アーチの角度)は変化します。枚数が足りなかったり角度が間違っていると、組立時にズレが生じて使い物にならなくなってしまうので、細心の注意と強靭な忍耐力が不可欠な工程といえます。
▲ 3.漆工(漆塗)
並べられた小札は糊付けされ、ようやく小札板となります。そのあと胡粉(ごふん)で下塗りし乾燥させ、さらに上から漆(うるし)を塗り耐久性と外見的美しさを向上させます。※最近は本漆よりもカシュー漆を使うことが多くなっています。
▲ 4.乾燥
数日かけて乾燥させ成形された小札板の数々。無数にあいている丸い穴は威糸(おどしいと)を通していくための穴です。兜の最下段となる小札板の裾は、X型に威糸を閉じていきます。
▲ 5.威(おどし)
4~5つの大小異なる小札板を、色鮮やかな威糸で丁寧につなぎあわせていく工程。小札板と威糸が組み合わさることで"𩊱(しころ)"が完成します。
▲ 6.完成
威糸の配列によりさまざまな色彩表現が可能となる"𩊱(しころ)には、作り手の長年蓄積された知識と美意識が反映されます。その配色にもぜひご注目下さい。
数々の作業工程を経てようやく完成する江戸甲冑。原寸大ともなると完成までにおよそ2年はかかるのだそう。仕上がりの美しさはもちろん、こうした制作技術への評価が高まり、今や江戸甲冑は美術工芸品としての価値を高めるに至っているのです。
主役をより美しく演出
人形をより美しく際立たせるために存在する周辺のお道具類。なかでも屏風や飾台は、全体のイメージを左右するほど重要な役割を担っています。
「主役の存在感を損なわずして、より魅力的な空間を演出するためのものづくりを」
そんなテーマと向き合いながら、職人は日々絵柄の構図や配色、そして質感に至るまで試行錯誤を繰り返し、卓越した技術をもって美しい製品をつくり続けています。
落ち着いた風合いが魅力的な"絹しけ屏風"。絹しけとは国産絹糸100%の織物に和紙を裏打加工したもので、不規則な織段や紬が独特の風合いを醸しだし空間を演出します。
使用される絹糸は、蚕の糸を数十本合わせてつくられるために不規則な太さとなり、傷などの不良品と誤解される場合がありますが、この不揃いこそが絹しけの良さであり、100%の絹織物という証明でもあります。
また屏風の開閉部分には金具の丁番を一切使わず、和紙でできた"羽根"とよばれる和紙丁番を使用する、いわば職人の伝統技術でつくる制作工程(本仕立)にこだわりました。
開閉部に切込が入っていて、両面に開く仕組みが特徴です。継ぎ目に隙間ができないので、見た目にもすっきりとした印象となります。職人の街、墨田区にある老舗屏風工房の片岡氏が生みだす技ありの工芸品です。
両脇に飾る木製の弓太刀飾り。弓は朱塗りの藤巻仕上げ、矢羽は天然羽根を仕様しています。シンプルな一本矢の飾りには「狙い(願い)が一発で仕留め(叶え)られますように」とのメッセージが込められています。
また、太刀には「光り輝き邪気をはらう」と言い伝えられていることから、簡略化せずに鞘(さや)が抜け刀身が現れる仕様となっています。※模造刀で切れませんが取扱にはご注意ください
一般的に弓の矢尻部分や太刀の柄の部分にはプラスチックが使われますが、本製品は一切プラスチックを一切使用していません。刀の反り返りや装飾金具にまでこだわった神聖なるたたずまい。ものづくりのまち東京墨田区の職人さんの手から生まれたたしかな逸品です。
大人目線でも十分お楽しみいただけるのは、ジャパンクオリティの五月人形だからこそ。お子さまの成長を見守りながら、ぜひご家族揃って端午の節句をお楽しみ下さい。
商品詳細
作者・工房 | 加藤鞆美(かとうともみ) |
生産地 | 東京 |
サイズ | 台・屏風付き:間口60 × 奥行40 × 高さ48 cm 人形本体のみ:間口35 × 奥行27 × 高さ42 cm |
本体仕様 |
江戸甲冑 正絹糸威 矧ぎ合わせ鉢 本革吹返 鉢裏皮張り 純金鍍金鍬形 和紙小札 木製唐櫃 ※兜本体にプラスチックは使用しておりません |
屏風 | 本仕立四曲絹しけ屏風 |
飾台 | 木製黒塗平台 |
弓太刀 | 一本矢朱塗藤巻弓太刀 ※プラスチックは使用しておりません。 太刀は鞘から抜けます。 |
お道具 | - |
付属品 | ■お手入れセット(毛バタキ・手袋・クロス) ■作者立札 ■陣羽織(台屏風ご購入のお客さまのみ) |
注意事項 | ■手作りのためサイズや形状、色合いが各々多少異なります。 ■ご使用のモニターにより、実際の色と異なって見える場合がございます。 |
作者・工房について